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第3回公開シンポジウム in 東京国際フォーラム ブランド・マネージメント実践発表会 2012年10月20日(土)

一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会は、2012年10 月20日に東京国際フォーラムで、
第3回公開シンポジウム「ブランド・マネージメント実践発表会」を開催しました。
オレンジフリーは医療機関のチームブランディングについてプレゼンテーションを行いました。

※(財)ブランド・マネージャー認定協会 公開シンポジウム報告記事より、桂川レディースクリニック様に関する記事を転載しています。

チームブランディングで生まれ変わった病院

医療法人 桂川レディースクリニック

滋賀県大津市にある産婦人科医院・桂川レディースクリニックは、チーム力を生かして競合と差異化できる医療機関を目指していました。そのための「チームブランディング」を、当協会のフレームを活用して実現したのが株式会社オレンジフリー代表の吉田ともこさんです。チームブランディングとは価値を高めブランディングと強いチームづくりを同時に行うことです。

同院のチームブランディングは2011年1月からスタートしました。目的は、「セクションの垣根を越えて連携し、優れた医療サービスを生み出し、安全安心な医療を患者さまに提供すること」です。午前診と午後診の中休みを使って、1 回2時間のミーティングを毎月1、2回のペースで12回行いました。メンバーは各セクションのチーフ6人とマネージャー。医療機関はトッ プダウンの構造になっているので、院長はあえてメンバーに入りませんでした。吉田さんはファシリテーションのポイントとして、「緊張させない」「退屈させない」「難しくしない」の3つを掲げました。「緊張させない」ために、「研修」ではなく「部活」と 呼び、笑顔でフラットな関係づくり、人と人とが響き合うような、業務会議では味わえないような体験をしてもらうよう心掛けました。そのために当協会の「褒める、聴く、受け 止める、待つ、楽しむ」の5グランドルールを毎回のミーティングの冒頭でメンバーと確認し合いました。
2つ目の「退屈させない」ために、アイスブレークを入れ、集中力が切れるころにミニゲームを入れ、一人一人に焦点を当てることに努めました。マーケティングに関して全く素人のチームなので、3つ目の「難しくしない」ために、マーケティング用語をできるだけ排除し、身近な事柄に置き換えて説明しました。ミーティングのプロセスは、レクチャー→ 個人ワーク→シェア→合間にゲーム→宿題というものです。
第1回のテーマ「お互いを知る」では、フレンドマップ、うそつきゲーム、褒め褒めゲームなど遊びの要素をかなり取り入れました。ブランディングのステップが進んでくると遊びの時間もとれなくなるからです。そして、毎回のミーティングごとに感想と気づきを 書いて全員でシェアしました。2回目以降から3C分析など実際のブランディングのステップに入りました。その中で、不妊症看護師が書いたリアリティのあるペルソナに全員が圧倒され、「こういう気持ちを抱いている不妊患者を皆で支えなければ」という一体感が生まれました。

そして、ブランド・アイデンティティは、産科が「私の家族を迎えるために、感動のお産ができる病院」というもの、不妊治療科が「全てにおいて信頼できる不妊治療病院」というものに決まりました。このブランド・アイデンティティに基づいて、絶対にとるべき行動(推奨規定)、とってはいけない行動(禁止規定)もつくりました。全体のものと各セクションのものをつくり、今では各部署で毎朝唱和しています。

6カ月間に及ぶチームブランディングを通じて、「自院のことがより好きになった」「自分たちはセクションの垣根を越えて仕事をする」という共通の思いを持つことができました。チームブランディングで得られた最大の成果は団結力。ブランド構築の型を使って、ディスカッションを重ねることでベクトルを一つにしていくことができました。同時に、経営視点、患者視点のものの見方が自然に身に付いていくことで、トップが指示を出さなくても自ら考え改善できる組織の素地ができました。しかし、本当の勝負はこのブランドステートメントに組織全体をどう巻き込んでいくかです。やり始めたら壁にぶつかっても継続することが大切です。それは経営者の情熱にかかっています。

インナーブランディングが組織のモチベーションを激変させる

シンポジウムの最後に、パネリストに、インナーブランディングの可能性をお話しいただきました。

●田中洋 中央大学大学院 戦略経営研究科教授

インナーブランディングはブランディングのセオリーからいえば、一番手薄な部分であり、私自身も数年前まであまり意識していませんでした。従来、組織のベクトルを一つにする小集団活動をブランディングと呼ぶことはなかったからです。私は以前、ニッサンの カルロス・ゴーン氏のお手伝いをさせていただいたことがありますが、そのときにゴーン 氏が意識していたのはまさしくインナーブランディングだったのです。桂川レディースクリニックのお話は、ブランディングを小集団活動に組み込み成功させたことに感動しました。この事例は、まさにブランド・マネージャーの情熱がチームをまとめ、ブランディングを成し遂げた素晴らしい事例でした。

●阪本啓一 株式会社JOYWOW代表取締役会長

インナーブランディングとアウターブランディングの境界が消えるのが最もいいブランドです。桂川レディースクリニックは、日頃の忙しい仕事の中で時間を割きながら、みんなの温度をうまくキープしている点が興味深かったです。組織には「2‐6‐2の法則」で必ずやらされ感でぶら下がる人が出てきます。「その作業には残業代はつくのか」といった質問が必ず出てくるものです。どんな組織にもそうした温度差は出てきます。そうすると中身を作る前にチームづくりにエネルギーが割かれる。インナーブランディングで重要なのはみんなの温度を高めることなのです。桂川レディースクリニックは最初に協会のグランドルールを浸透させることで、みんながポジティブで協力的な人になった。抽象的、感情的取り組みの前にそうした構造的な取り組みをすることが一つのヒントかなと思います。

●小池玲子 クリエイティブハウスR-3代表

今回、あらためてブランド・マネージャーの領域と責任が広がっているのを感じました。ブランド・マネージャーはまず、会社のトップと信頼関係を築かないとインナーブラン ディングはできません。また、チームのメンバーをうまくリードする統率力、まとめあげる力が求められます。従来のブランド・マネージャーはアウターの考えしかありませんでしたが、今回のシンポジウムでブランド・マネージャーの領域の新たな発見がありました。今後、ブランディングの領域は最も経営に近いところで動いていくことになると思います。難しいのは内部でつくり上げたブランド・アイデンティティを外に向けてどう発信していくかです。外に伝わらなければ自分たちの一人よがりで終わってしまいます。中と外がつながって初めて成果が出ます。

●榛沢明浩 株式会社日本ブランド戦略研究所代表取締役

桂川レディースクリニックのペルソナが非常にリアルで印象に残りました。こういうペルソナが出てくるとチームは一つにまとまっていきます。ブランディングする場合、大企業では前提として全員参加は不可能です。ですから、(外部も含めた専門部隊が)ステートメントを作ったり、ロゴを浸透させたり、ルールブックを作って共有させたりということの方が多いのです。今回の発表を聞いて、インナーブランディングは小さい組織ほど有効なプロセスだと感じました。

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